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第3回教えて伊東先生「便秘へのアプローチ」前半:よくみる薬の話を中心に

KO:TSUKASA訪問看護ステーション管理者饗庭(甥)

OJ:Dr.伊東史雄(叔父)

注意:あくまでフランクな雑談ベースでの勉強会の書き起こしなので、情報や記載に不正確な表現があるかもしれませんので、その点はご容赦ください。こんな雰囲気で医師との勉強会をしている訪看があるんだと知ってもらうのが記事の目的です。

「便秘薬総論(雑談)」

KO:酸化マグネシウム、ピコスルファート、この2つの薬剤は本当によく目にする。前者は、便の水分量を調整して柔らかくするお薬。後者は、腸の蠕動運動の促進するお薬だと理解している。

在宅の現場でよく疑問に思うのは、薬剤の調整に関して。

ピコスルファートの滴下数の調整、7滴を8滴とか、これはまぁ、ご本人ご家族の気持ちに寄り添う感じで、まぁいいようにやりましょうということでよいかと思う。

酸化マグネシウムに関しては、よく下痢になったのでその日はスキップとか、2日に一回とか調整するシーンをよくみるけど、そもそも、週単位で効果がでるものだと思う。一週間くらい内服を続けてようやく便性状が安定するはずだけど、在宅では割と即効性のある薬剤(下痢になった→その日の夜分をお薬カレンダーから抜いた→翌朝止まった。みたいな感じ。)として本人家族も認識してるし、看護師もそのように対応している。

このような場合の原則的なアプローチは、本来どうあるべきなのかな?

OJ:下剤を服用している患者の下剤の減らし方、というテーマからは少し迂遠になるけど、各お薬の使い方のポイント、みたいなものからお話ししていくね。

酸化マグネシウムの使い方のポイントはまず2つ。

・腎機能を確認し高マグネシウム血症に留意

・PPI等のお薬との飲み合わせに注意

皆さんが訪問する高齢者の方は、総じて腎機能が落ちてる人が多いと思う

とりあえずeGFRの値が60切っていたら、酸化マグネシウムは要注意、と思っておけばよい。その場合の許容できる限度は1000mg/日。

なので、330mg×3とかはセーフなんだけど、市販の下剤とかこっそり飲んでるパターンもあるから、よくよく注意して場合によっては報告貰えるとありがたい。

その上で、高マグネシウム血症の諸症状がでてないか、具体的には嘔気や傾眠を観察する必要がある。嘔気なんかは食欲低下に直結するしね。

あとは酸化マグネシウムってのは、胃液と混ざることで効果がでるようなお薬なので、胃の全摘してる人や、PPI服用中で胃酸分泌が抑えられてる人なんかは、薬の効果が得られないので要注意。

これも本来は医者がちゃんとみろって話なんだけど、割と現場あるあるなので、みかけたら報告相談ができるといいんじゃないかなと思うよ。

下痢で困ってしまった場合は適宜減量すればよいなので、皆が普段からやってるよう1日3回を2回とか、2日に1回とかにして、週単位での便性上の確認をし、その人にとっての適量(気持ちよく排便できる量)を見定めていったらよいのじゃないかな。

ピコスルファートに関しては

・刺激剤の使用はピンポイントで

これにつきるかと思う

その上で、薬剤耐性による不要な増加、虚血性腸炎のリスクに注意

虚血性腸炎「らしさ」をみかけた場合(腸蠕動の亢進のある腹痛+下血)は、速やかに医師への報告、その場でできるアドバイスとしては、とり急ぎ絶食(白湯くらいはいいだろうけど、経腸栄養食なんかはストップした方がよいね)の説明かなと。

効きすぎてる場合、もしくは充分な効果を得られていない場合の対応としては、10滴をスタートに5滴を目安に±でよい気がする。

あと少し話にあがった大建中湯

これも腸をグッと動かすという意味では刺激剤に分類されるんだけど、この中身って、山椒、生姜、水飴とかなんだよね。なのでお薬というよりも食品に近いイメージ。

その意味でもマイルドな刺激剤なのでおすすめ。基本的な使い方は2×3なのだけど、1×3で十分なような実感がある。これも適宜調整でよいと思うよ。

KO:なるほど、大建中湯をうなぎにかけてもよいってのは、ここ数年で1番の勉強だわ。

OJ:まずいやろな。

KO:次のトピックでは、アミティーザやグーフィスといったお薬に関して。先日とても面白かったのが、ある大学病院の消化器内科の受診同行にいった時のエピソード。その際に主治医が教えてくれたのが、「いまガイドラインが変わってきていて、基本的に便秘に対するアプローチはモビコールで便を柔らかくしグーフィスで腸を鍛えるということ。「グーフィスで腸を鍛える?」これは一体どういうことなのだろう?

そんな話を皮切りに、アミティーザやグーフィスに関しても色々教えてもらえると嬉しいなと。

OJ:アミティーザは小腸に作用して水分の分泌を増やすことで、便を柔らかくするお薬ね。これも新しいタイプの下剤で期待されている。

おじちゃんとしては、飲み始めの吐き気に注意っていうイメージ。先の話と一緒だけど、吐き気は食欲不振につながるので、やはり要注意だよね。ただ、そうした吐き気は若い人>ご高齢の人で出やすい印象。

これも発売当初は24μg×2/日から始まったんだけどいまはその半分の12μg×2/日で十分となっていて、そんな感じで使うね。

グーフィスも同じく新しいタイプのお薬。胆汁トランスポーター阻害役。これも胆汁が大腸に流れることで水分量が増えて腸の動きが活発になる。これをその先生は腸を鍛えるって表現されたんじゃないかと想像するけど。

またこのお薬のよいところは便に対する直腸の感受性を向上させるんじゃないかと言われているところ。

Ko:さて、本日はこの辺でタイムアップ。

とても興味深い話をありがとう。

アミティーザやグーフィスが少し身近な存在になってきました。

また、オピオイドを服用されてる患者さんによく処方されるスインプロイクなんかも含めて、今度は、そうした新しいタイプのお薬の使い分けや、臨床現場での直腸診のコツ、みたいな実践的な話にも踏み込んでいければいいなと思います。