第2回教えて伊東先生「疼痛コントロール」
ブログ
2023年12月2日
弊所でよなよな行われている、とある夜会、、もとい勉強会
「おしえて伊東先生」とは
僕(TSUKASA訪問看護ステーション代表あいば)と
僕の実のおじであり、鳥取で在宅医をしている伊東史雄医師の
フラットかつフランクな雑談ベースの質問会です
この勉強会の趣旨等は、また別の機会に譲るとして
今回は先日行われた「疼痛コントロール」というテーマでの会を
ブログという形で、共有していきたいと思います
※この勉強会は正確性やエビデンス的なものより、現場感あふれる雑談、意見交換という趣旨で実施しております。不正確な表現や記載がありましても、ご容赦頂ければ幸いです。
以下 饗庭→A おじ→O
トピック1
~疼痛緩和の変遷~
A:ほとんどの現場の看護師はWHOのラダー、つまり、アセトアミノフェン→NSAIDS→オピオイド、という順番をいまも主流だと思ってる。
ところが、最近おじちゃんから聞いた話だと疼痛の状況によっては、最初からオピオイドを使う方が主流になりつつある。
このあたり、是非詳しくお聞きしたいなと思います。
O:アセトアミノフェン、NSAIDs、オピオイドとそれぞれ効いている場所(作用機序)が違うよね。
したがって、必ずしも上記順番を守る必要はなく、その人の疼痛にあった使い方をしてあげればよい。そういう考え方になってきた。
もちろん、モルヒネには便秘や眠気、吐き気、えぬせいずは胃粘膜障害などの副作用があり、「疼痛緩和」以外のマイナス面、リスクがある。
その点、アセトアミノフェンは、もちろん肝機能のモニタリングは必要だけど、まぁ副作用も少なく、使いやすいお薬だと思う。
なので、そんなに痛みがでてないならば従来通りアセトアミノフェンから段階的に使っていったらいいと思うけど。
もうすでにかなりの痛みがでてるなら、最初からオピオイド、という選択肢は非常に有用、ということがわかってきたんだ。
A:なるほど、すごくよくわかった。わかりみぶかい。。
そういえば、こんなケースもあったという素朴な疑問コーナーとして、
オピオイドも使用している患者さんで、俺はロキソニンの方が効くといって「もっとロキソニンをたくさん飲んでもいいか?」と質問されたことがある。
いわゆる終末期で、余命いくばくもないなという状況でも、いやロキソニンは1日3回まで、みたいな感じで増量は認められず悶々とされるパターン。
アセトアミノフェンやNSAIDSの飲み過ぎの害って、現場のドクターとしてはどんな風に考えているのだろう?
O:まず、アセトアミノフェンは十分な量を使う、これがポイントで一回1000mgくらい使った方が効果覿面
ロキソニンは確かにキレがよいし、スッキリする感もある、なので奏功感があって、これを使いたいっていう人がいるのもわかる
おじちゃん自身の経験でも、3T×3で出していた終末期の患者さん
確かにがんの疼痛コントロールの面ではうまくいってたけど、ある日吐血してしまい、調べてみると胃潰瘍がいたるところあったみたいな事例を知っている
やはりそうなっては、精神的にも辛いしね、本人も家族もびっくりしちゃう
ある程度のリスクマネジメントは、いくら終末期といっても必要なんじゃないかなと思うよ
いわゆる「最期の時間」を落ち着いて過ごすためにもね
~オピオイドの選択~
A:さて、次のトピックではオピオイドの使い方について、ざっくりでいいので医師の思考回答が知りたいなと思う
まずもって、経口、注射、貼付、坐剤と投与方法の選択があるかなと思います
注射よりは飲めるなら口から、の方が患者の負担(制限や痛み)は少ないように思うけど、じゃあ経口と貼付だったらどうなんだろう?
なんとなく、経口→貼付→注射、緊急時の座薬、みたいなイメージがあるけど、このあたりスッキリできると嬉しいなと
次にオピオイドも色々あるよねと
モルヒネ、オキシコドン、ヒドロモルフォン、フェンタニルがパッと思いつくけど、これの選択基準ってなんなんだろう?
よく呼吸苦にはモルヒネ、、みたいなイメージがあるけど、あくまでイメージ。
このあたりをドクターがどのように整理し、現場で使い分けているのか知りたいなと。
O:1986年頃~いわゆる医療用麻薬(オピオイド)による疼痛緩和の歴史がはじまって、、
でも当時はモルヒネくらいしかなかったんだよね
それがいまは本当に多種多様になっている
また薬としての種類も、オプソのような飲み薬から、オキノームのような散剤、フェンタニルのような貼付剤とほんと様々
僕らはオプソなんて飲みやすそうって思ったりするんだけど、以外と錠剤がのみやすいっていう人がいたり、好みも様々だよね
症状からオピオイドを選択するというよりは、その人に合う、もしくは、その人にとって使いやすい薬がなんなのか?って考えるのも大事かなと思うよ。
まぁ、飲めない人には貼付ってのはその通りだけど、貼付剤はやっぱり効き目に個人差があるよね
つまり、予測しづらい
人によって浮腫があったり、皮膚の表面がガサガサだったりすると
吸収率の問題なのか効果の出方にかなり個人差がある
また効果が出過ぎた場合にも、剥がしたってすぐに効果とれないしね
そうした面からは、そんなに使い勝手(疼痛のコントロールがしやすい)がいいとも思わない節もあるな
あと、モルヒネはやっぱり呼吸困難感にはある程度効果があるという面があって、ヒドロモルフォンなんかはモルヒネから作られた合成麻薬だから、やっぱりそのあたりの効果も引き継いでいる
また、同じヒドロモルフォンでさまざまな薬があるので、タイトレーションもしやすいしね
上手にいけば、それ一択でいけるんじゃないかなと
複数のオピオイドを使用しないってのは、管理面からみても楽なんだよ
昔の4番が王貞治でモルヒネだとしたら、いまのヒドロモルフォンはさしづめ大谷ってイメージかな
A:すごく面白い、こんな話は多くのナースが聞きたいことだと思うよ
O:さて、そろそろ今日の締めとして、医師から看護師に伝えたいことは、オピオイドを使った場合、やっぱり便秘に対するアプローチをしっかりして欲しいってこと
便秘を丁寧に予防することで「吐き気」や「せん妄」という症状をおさえることができる
そうした予防がきちんとできていることは、その人やその人の家族ふくめた「終末期という時間の人生の質」にとってとても大切なことだと思います
便秘薬もオピオイド同様、いまは色んな種類がでてるよね。
スインプロィクなんて、いいんじゃないかななんて思うよ。
A:次回は是非「下剤」というトピックで話を拡げれるといいな